日藝とは 日藝賞
在学生、教職員などが中心となって選考する「日藝賞」は、著しく日藝の名声を高め、
その業績が社会に貢献し、芸術を志す学生に夢を与える人物に贈られています。
各界に多彩な人材を輩出していることで知られる日藝。特にメディアやクリエイティブの世界には出身者が多く、仕事を介して同級生や先輩・後輩と偶然に出会うケースも多いようです。そんな事実に着目し、校友とのつながりを深めるために創設されたのが『日藝賞』。全ての日藝出身者を対象にその年に最も活躍した人物を独自に表彰することで、出身者への敬意を表すとともに、在学生への励みとしています。まだ形になっていない表現への衝動を、よりよいカタチで表現してほしい。そのためのフックになれば…。そんな「遊び心」が現れた日藝ならではの賞なのです。
第9回 日藝賞
日藝賞は日藝の校友とのつながりを深めることを目的として、2006年に創設されました。受賞対象者は、中退者も含め、かつて日藝に在籍していたことのある人すべて。活躍分野は一切問いません。在校生、教職員、芸術学部校友会役員等による投票で候補者が選ばれ、日藝賞選考委員会が業績などを審議して決定します。
第9回となる今回は、絵本作家でありイラストレーターの荒井良二氏と、脚本家の中園ミホ氏が選ばれました。
荒井氏は1980年、美術学科卒業。多くの人の心に残るあたたかな作品は、児童文学のノーベル賞ともいわれる「アストリッドリンドグレーン記念文学賞」を日本人で初めて受賞するなど、国際的にも高く評価されています。
中園氏は1982年、放送学科卒業。2014年のNHK朝の連続テレビ小説「花子とアン」ほか数多くのテレビドラマの脚本を手がけられ、徹底した取材をもとに描く人物描写や働く女性のホンネに迫るセリフで、多くの視聴者からの共感を得ています。
授賞式は、2015年4月4日の芸術学部入学歓迎式の中で行われました。日藝賞選考委員長の野田慶人学部長より、記念の賞状、名前が刻まれたトロフィーなどが手渡され、お二人からは、受賞の言葉とともに新入生への祝辞が贈られました。
荒井 良二 絵本作家
入学から40年後の受賞に驚き
僕が入学したのは1975年4月5日で、今日は2015年4月4日。入学からちょうど40年後に日藝賞をいただけることに、驚き、感動しています。子供の頃から絵が好きだった僕は、絵を描くことで社会とつながりたいと考え、日藝に入学しました。山形市で生まれ育った僕が、上京して一番にカルチャーショックを受けたのは、東京の本屋さんの大きさでした。毎日のように本屋さんへ行き、さまざまな本を手に取って眺める中で、外国の絵本と出会い、絵本作家になろうと決心したのです。そして、絵本作家になるためには絵本を描く準備も必要だけれど、まずは、自分を準備しなければと考えて学生時代を過ごしました。「自分を準備する」とは、謎めいた言葉かもしれませんが、絵だけでなく、映画でも、音楽でも、創作の準備をする前に、自分を準備することが大事だと僕は思います。みんなも、日藝で自分を準備してください!!
PROFILE
1956年、山形県生まれ。美術学科卒業後、小説の装画、挿絵、広告、舞台美術、アニメーションなどの分野で活躍。2010年および2012年、山形で「荒井良二の山形じゃあにぃ」を開催。2012年、NHK連続テレビ小説「純と愛」のオープニングイラストを担当。2014年、「みちのおくの芸術祭山形ビエンナーレ2014」のアーティスティック・ディレクターに就任。また、ライブペインティングやワークショップなど、活動の幅を広げている。
●絵本:『MELODY』(1990年)、『バスにのって』(1992年)、『ぼくがつぼくにちぼくようび』(2001年)、『うちゅうたまご』(2009年)、『ねむりひめ』(2012年)、『じゅんびはいいかい』(2015年)他多数●受賞歴:第46回小学館児童出版文化賞(1997年/『うそつきのつき』)、ボローニャ国際児童図書展特別賞(1999年/『なぞなぞのたび』)、第11回日本絵本賞(2006, 年/『ルフランルフラン』)、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞(2006年/『スキマの国のポルタ』)、第59回産経児童出版文化賞大賞(2012年/『あさになったので、まどをあけますよ』)など
中園 ミホ 脚本家
栄えある賞の受賞を励みに
ギリギリの単位でようやく日藝を卒業した私が、尊敬する林真理子さん、同じ道を歩む三谷幸喜さんや宮藤官九郎さんたちと同じ賞をいただけるのは、本当に光栄で夢のようです。学生時代の私は、個性的で、クリエイティブで、爆発的に面白い仲間が周囲にたくさんいる中で、自分はなんとつまらない人間なのだろうと思っていました。学校へ行くのが何となく嫌で、校門を素通りして喫茶店へ行ってしまったこともあります。そんな私がこの賞をいただけたのは、仲間や先生方から受けた刺激を、自分なりに30数年間育んでこられたからではないかと思います。 日藝で過ごした経験があると、社会に出てどんな仕事に就いたとしても、人生がすごく面白くなります。みなさんも、たくさんの人と積極的に関わり、刺激をもらって面白い人生を歩んでください。私も、栄えある賞の受賞を励みに、これからもいっそう面白い人間になるためにがんばります。どうもありがとうございました。
PROFILE
1959年、東京都生まれ。放送学科卒業後、広告代理店勤務、コピーライター、占い師を経て、1988年、テレビドラマ『ニュータウン仮分署』で脚本家としてデビュー。以後、テレビドラマを中心に数多くの脚本を執筆。2014年には、NHK朝の連続テレビ小説『花子とアン』で過去10年間の朝ドラ最高視聴率を記録。2010年からは、日本大学芸術学部客員教授を務める。
●テレビドラマ:『For You』(CX・1995年)、『不機嫌な果実』(TBS・1997年)、『恋の奇跡』(テレビ朝日・1999年)、『スタアの恋』(CX・2001年)、『ハコイリムスメ!』(CX・2003年)、『anego』(NTV・2005年)、『ナサケの女 ~国税局捜査官~』(テレビ朝日・2010年)、『はつ恋』(NHK・2012年)、『Dr.倫太郎』(NTV・2015年)他多 数●映画:『東京タワー』(東宝・2005年)、『ゴースト もういちど抱きしめたい』(パラマウント/松竹・2010年)●エッセイ:『恋愛大好きですが、何か?』(2007年)● 受賞歴:放送文化基金賞および橋田賞(『ハケンの品格』2007年)、向田邦子賞および橋田賞(『はつ恋』『Doctor-X 外科医・大門未知子』2013年)